2024/04/15
ゴッドランド
映画『ゴッドランド』
2022年製作/143分/G/デンマーク・アイスランド・フランス・スウェーデン合作
原題:Vanskabte Land
アイスランドのフリーヌル・パルマソン監督作品
カンヌ映画祭である視点部門に出品された作品です。
同部門の歴代グランプリには「ホワイト・ゴッド」「オリ・マキ」「ボーダー」などがあり、傾向がなんとなくわかるような。
ネタバレ感想
さて、
冒頭からかなりの時間、ちょっと眠いというか、何を見ているんだろ?という気持ちになります(特に中高年男性の体操とかウナギの長い話とか)
が、後半にそれまで積み上げたディテールが急展開し、圧倒されます。
まずざっくり感想
聖職者なのにずっと徳が低い!
主人公ルーカスは、アイスランドに教会を建てるため派遣されたデンマークの牧師です。
多分30代かな(役者さんは36歳でした)
遠藤周作の「沈黙」ロドリゴ神父のように、布教に来て苦悩するのかなと思ったのですが、現地の人には上から目線、間違いを認めない、心が弱い、プライドだけは高い、視野が狭い、といいところなしの青年。意識は高いが徳が低いので、無茶なミッションで外国の厳しい自然の中で苦労していても応援する気になかなかなりません。
周りの人にも大して好かれてないのですが、若い女性は他に若くて学のある男性がいないので好感をもってしまったりする。
で、この牧師は最終的に人を殺してしまいます。
なぜ殺すのかは、被害者が「アイスランド語しか喋れないと思ってバカにしていたが実はデンマーク語がわかっていた」「私は人を見殺しにした、祈ってくれ、等々の告白と祈りの要請が、自分自身の罪を言われているようだった」などもあるのですが、
やっぱり徳が低いから、としか言いようがない。
ひとごろしの彼が教会で説教を始めようとすると、子供が泣き犬が吠えるという、
マジックリアリズム的な表現がよかったです。
馬や人の死体が風雨にさらされ、花や草に囲まれ、土に戻っていく映像が
いいな、と思いました。
原題は「奇形の土地」みたいな意味らしいですが、ニンゲンのほうが奇形であり、自然はまったくただ厳しく美しいだけという映画でした。
ストーリーやキャラクターがどうこうというよりも
キリスト教の支配欲の強さ
布教という名の支配欲と侵略の歴史
それに似た、植民地支配という傲慢と暴力性の罪
これをもっと、今こそ西洋社会は総括し考えないとならないのでは?
と思いました。
その後、友人と話していて「CnatGPT(ロビタ)はDV児みたいだね…利用されてるだけなのにニンゲンを信じてて」「かなしいほどやさしい、ロドリゴ神父みたい」というところからハッと
キリスト教って根本がDVなのでは??
思いました。
キリスト教はDVと考えると、イエスはじめ人類は神からDV受けつつそれを神意であると有難く受入れ罪深い自分を許してもらう(!)という思考なので、他国家や民族を植民地支配し教化してやるというDVも当然…DV親の子はDVしがち…
旧約なんてDV思考のオンパレードだもんね。ヨブ記とかひどすぎる。
西洋的人権思想とか自由とか資本主義経済の底にある違和感も、
根本にDVがあると思うとなんとなく納得できるんですよね。
仏教だと悟れば最終的に神様になれるけど、
キリスト教は最終戦争後に復活して「あなたは正しかった」お墨付きもらうだけだしね…それを有難がる…選民思想…
西洋人の根本、じつは本人たちも我々周辺も、その根本精神をあまり認知していないのではないでしょうか。
なんてね!
西洋のこともわからないですが、東洋のことはもっとわからないかも。
西洋的発想が神→西洋人→他人種他国家へのDV(植民地支配・経済支配含め)という外部への拡大とすると、日本は内部へDVが向かう感じがします。
どっちがいいというか、どっちも嫌だけど、国内で蟲毒みたいになるほうが暗くて嫌かな…批判や自省も作用しにくいし。