シグルイ2

 

シグルイ。読みかえして、面白いなあ~~~と思ったんですが

徳川時代の圧倒的上下関係による、平和。

下剋上や裏切りもあって当然だった戦国時代を経て、
住む場所や着るものすら決められた身分制度にガチガチに縛られたなかで
経済が発展し、文化が発展し、平和と繁栄が訪れる。

私、江戸時代の文化好きなんですよね。
江戸の18世紀なんて西洋ルネサンス以上の文化だと思ってるし。
応挙先生を美術史で一番あがめているし。

でも、平和を希求した結果、階級社会で個人の人権や自由を剥奪して
「管理する人間に責を負わせ末端には思考させることなく幼児でいさせよ」
(へうげもの 徳川家康)だった江戸時代に対し、

同時期に清教徒革命やフランス革命やアメリカ独立戦争や産業革命があった
西洋は何を希求したかというと、
階級社会の破壊と個人の人権や自由なんですよね。
その結果、戦争や内戦が起きる。

どちらがいいのか、わかりませんけど、


でも、シグルイでは藤木が江戸徳川、伊良子が西洋文明の側を体現しているんですよね。
そして、師匠の愛人をかまわず奪い、三重との公開初夜を拒否し、命じられた殺人に嘔吐し、みずからの意思のみで女を抱き人を殺す伊良子が「傀儡ではない男」として死後も三重に選ばれる。

三重のため、家のため、と自分を殺して権力に従った藤木は「傀儡」として拒否される。


なぜなら、江戸徳川の平和と繁栄は、「弱者の個を殺し搾取する」ことで成り立っていたから。
女(特に武家の女)はそこで「男の所有物」として従い譲渡される弱者だったから。
三重はそれを拒否し、父の門下生=セミの抜け殻と伊良子=切られた男雛を引き出しに入れ、虎眼流の士が殺されだして衰弱していた体に肉が付き始める。
父の傀儡である門下生が死に、自分を子を産む道具として見ていた父が死に、自由になりはじめたからです。

西洋文明の騒乱は、「弱者の個を殺し搾取する」に抵抗する人々の歴史で、その手段として「経済力」が発生したことで、「経済力」が権力となる。
平和も平等もけっして達成されたわけではないが、そこには、三重が伊良子にみたような「希望」があるわけです。

江戸の平和の中には、特に大きな希望はなくて、
ただ、いまの穏やかさや楽しさ、考えずに身を任せられる制度の気楽さがある。

ほんと、どちらがいいのか。わかりませんけど、

ただ、閉じた平和は、「黒船来航」「明治維新」の「俺たち遅れてる!貧しい!やばい、やられる!」でぶち壊されたことは確か。


わりと現在も停滞し、人権なんか軽視されていると思うんですが、
このままごまかしていけるのかな、とは思いますね。

そして、女性のほうが、先に見切りをつけると思う。三重のように死ぬわけじゃないけど。