2020/07/06
橋本治の恵みとゴールデンカムイ
最近何かが足りないんですよね
なんだろうなあ~と思っていたら
「橋本治じゃない?」
と言われ、それだ!と本屋に行きました。
『そしてみんなバカになった』河出書房新社
ものすごーーーく面白かったです。
もどかしいことをこんなにもわかるように言葉にしてくれるのは、治のほかにいない!
「エラそうなもの」が「売れるもの」に変わっただけというのはすごく納得。
日本における反知性主義ってそれでは。
米国での元々の意味合いは全然違うらしいですが。
売れればいい、ってなかなかに貧乏臭い発想。貧乏はいいけど貧乏臭いはいやだな。
昭和は終わったが昭和という時代のイデオロギーは終わっていない、そこにアップデートされた思考はなくて経済のことばかりになってる。日本人はずっと経済を何とかすることで問題をやり過ごしてきたから「経済ではなく人間の問題」という根本の原因が見えていない。昭和とともに終わったものを終わらせられずにいる
オタクなのでオタク趣味から考えてしまうんですけど、その後ゴールデンカムイを読み返したら、明治っていうとこに遡ってるのがすごく面白くて
近代を最初から考えてみよう、何を切り捨てて、ないことにしてきたのか、今に至る原因は歴史の中にしかないから、そこから検証しようってなるのかと。そして物理的にも象徴的にも父親ごろしが沢山出てくる。失われてしまう父権に対して、成り代わろうとする人もいるし、新たな価値観を探す人もいる。それはリーダーがいて従っていればよかった時代よりずっと難しい。ヒロインの名前が新年、未来を表していて、終わる時代に傷つけられた主人公と対等な相棒として未来を模索する、対して第七師団は父権制の闇でもがいてるというのは凄く意味深だなと思います。
優れた作品には時代が事象として顕れてくるので、意図した内容ではなく、エンタメだからどう進んでいくかはわからないけど。そして自分の読解力が15歳の男子並なので、他の大人の解釈だとどうなのか聞きたいです。
平成が死に切らない昭和に取りつかれた空虚な30年だとしたら、『おそ松さん』は、昭和イデオロギーというゾンビの中で俺たちは成熟も自立もできず、バカのまま最終局面で、でも仕方ないじゃん、自分たちのせいじゃないもん、それでそれなり楽しくやってるし、でも未来ないけどね、まあ俺たちこのままでいいか!考えたくないしな、こっちを笑ってるそっちも似たようなもんだよ、という物凄い批評と自嘲に満ちているがゆえに新しいこの先を模索する作品だったと思うんですよね。
三期にはそういう方向に戻ってくれればいいな、と思います。