桜の森の、満開の下…!

 

 

好きなものは、呪うか、殺すか、戦うかしなければならないのよ

新しく、何かを作ろうと思うのなら

落ちてきそうな広くて、青い空をつるして、

いま私を殺したように

 

立派な仕事をしてくださいね…

 

 

【坂口安吾原案 野田秀樹 作・演出『桜の森の満開の下』
 歌舞伎版(2017)・シネマ(2019)
 中村勘九郎:耳男 中村七之助:夜長姫 市川染五郎(現・松本幸四郎):オオアマ】

  

 

「素晴らしかった…何度見てもやっぱり泣いてしまいます」

「歌舞伎座で見た時とはまた違って、表情がアップで見られたのがよかったですね」

「七之助さんがもう、天才で…声を発した瞬間にぞわっとする…ラストの夜長姫のお顔が性別も人間も超えた精霊の美しさで…
もう、紅天女ここにいます!このかたです!亜弓さんとマヤを足して2にした人ですよ!って叫びたくなりました」

「野田さんのセリフが複雑で、言葉遊び『歴史の轢死』とか『深謀遠慮の棒の下に閉じ込められた』とか古事記からの引用とか、まだまだわからなくて。
政治や歴史、芸術、弱い者への隠された暴力、恋、陰謀、あまりにもたくさんのメッセージがあるけど、最後にすべて霧散して美しさだけが残るカタルシス…」

「『私は…』って言葉を切って『…おまえは私と一緒にいなければだめなのよ』『明日から私、いい子になるの』美しいのにかわいい! これを兄弟でやってるんだからたまらないものがあります」

「荷台に地獄を積んだ自転車で永遠の下り坂を笑いながらブレーキもかけず落ちていける夜長姫と、人間は永遠に落ちていけるほど強くない、という耳男ですね。最高」

「お兄ちゃんは真面目というか、お父さんと野田さんの演技をなぞってるんだなあという感じはしました」

「演じてる感じを与えてしまうんだよね。でも弟と父親が天才というのは辛いものがあるのではないでしょうか」

「天賦の才って残酷だよね…アマデウスとサリエリ」

「良かったとか感動とか簡単に言えなくて、どこを押されたかわからない心の鍵盤をババーーッツと奏でられてわけもわからず、すごい…って涙があふれる」

「役者さんによって見え方が変わるのも舞台の面白さですよね。昨年の深津さん版はもっと無垢で奥深いキャリア感がある気がしました」

「妻夫木さんの耳男がピュアでね、天海祐希さんの大海人皇子が美しくてかっこよくて、きっと早寝姫にも表の言葉以上の心があったに違いないって思える繊細さで」

「染五郎(当時)の大海人皇子はもう悪かったもんね~笑」

「アップで見ると『顔が悪い!』って震えたよ。色悪が似合うよね」

「俗物なので見るたびにマナコへ感情移入します」

「銀座の画廊でシャガールの絵を見て、素晴らしさに心がとけていくようなのに、俺の目は値札に引き寄せられてしまうんだ、一枚の絵を見て画家を志す者もいれば自分が俗物だと知る者もいる」

「あのシーンはしみますね。わかる!!」

「俗物だけど、鬼の息吹がないとこの世はダメになるって戦うのね」

「鬼は悪ではないからね…本当の悪は、歴史を改変して鬼を閉じ込めてなかったことにしようとする側だからね…」

 

 

 

「とにかく夜長姫が素晴らしくて」

「七之助さん…本当にすごかった…」

「『みーつけた!』『きりきり舞いよ!』『太陽になって、人が死んでいくのをずっと、見ていたいわ!!』

「松たか子さんもすごいけど、まっさんは荒ぶる神だから『殺します』って迷いがないから」

「逆鱗の時みたいにね。統合失調症をやらせたら日本一」

「でも野田地図の松さんが一番素晴らしいから、今年の新作に出てほしいな…YouTubeで『贋作 罪と罰』何度見ても震えて泣くもの」

「あーなんか、言葉では表現できないですね」

「クストリッツァの映画と同じで、あまりにも大きな世界観を受け止めるには自分はまだまだ心の畑が小さい!って思います」

「大学生の時みても、長くてつまらないと思ってました。この2、3年です」

「どこがって言えないけどすごい事だけとりあえずわかるようになりました」

「精神年齢がいつまでも低すぎるから、まだまだこのありさまなんですけどね」

 

 

「野田版歌舞伎の鼠小僧や研辰もですが、野田さんはいつも暴いてきますね。デビルマン的な人間の恐怖や邪悪を」

「ヘニング・マンケルがエッセイで『書くことは自分の心の懐中電灯で闇を照らし、隠されたものを暴くこと』って書いてましたけど、まさにその通り」

「先週今週とクストリッツァのアンダーグラウンド、桜の森とえぐえぐ泣いて、ブラッククランズマンとか、最近見たもの全部泣いてる気がする。全部暴いてくる。暴かれ泣き」

「めったに泣かないのにね。いい話とか、はあ? なにこの茶番?って唾を吐くようなクズなのに」

「心のジョーカーが荒ぶるからね」

「ホアキン・フェニックスがジョーカーってどうなのでしょうか」

「ちょっと悲しい話にしたいんじゃないのかな。おれたちのダークナイトジョーカーは違う」

「本当の意味であれを再現できるのは松たか子さんだけの気がします」

「……それ!!!」

 

 

 

 

泣きながら二人で昼から飲んで毒とかはいているので、店員さんに避けられているような気がしました(すぐ被害妄想に陥るタイプ)