2021/03/25
ゴールデンカムイ25巻感想
あれ。本誌から修正けっこうありますか?
上等兵エピソードや勇作さん絡みなど、記憶にあるのとセリフが違うような。
ヤンジャンアプリを見たら既に修正済みだったのですが、ちゃんと本誌購入して修正箇所をサイトで検証している方がおられました。
ありがとうございます!!! スライディング土下座感謝!
後世に必要なのは客観的事実資料なんですよね。本当にありがたいです。
思った以上に修正をされていて、ノダ先生すごい!なんですが、気になる『上等兵たち』のところだけ
- 本誌:『勇作を殺して父上がオレに愛情があったとわかればしょせん勇作だってオレと同じ人間になりえた道がある、そう思わないか?」
⇒ 勇作を消せば自分が父に愛される可能性がある → 勇作だって結局人を殺す人間かもしれない - 単行本:『実は俺も父上から愛されていたとすれば? その場合俺と勇作殿との違いは何も無いってことだよな?』
⇒ 俺が父に愛されれば勇作と同じ → 高潔で殺人をしない勇作と殺人を犯す自分に違いはない(愛情より勇作が自分と同じことが重要)
微妙に違うんですが、11巻の段階で「勇作がいなくなったらもう一人の息子を想うのではないか、愛おしくなったのではないかと」父親の愛情を確認するための殺人、のように言っていたのが、「勇作と俺は同じ」ことを確認するため、と描かれているんですね。
何が同じかというと、「俺は人を殺さない勇作と同じ」ということです。
この辺の修整は尾形を最終的にどう明確にするかのための修正だと思うので、後述します。
- 本誌:一番安い駒 → 単行本:農民出身の一番安い駒
宇佐美の出身階級に絡めたセリフ追加は後あとの布石というかフォローでしょうか。
トムとジェリーみたいな二人…仲良く喧嘩しな😊
色々と言い回しや見せ方が変わっているところ、方向が若干違うけど尾形理論がおかしいのは同じで、おかしい論理を「やっぱりオレはおかしくないな」っておかしい宇佐美に確認するところどうしても笑ってしまう。
訂正して欲しくないから異常な人に確認するって的確すぎる。
(オガタ理論は部分的にはおかしくないし頷けるところもあるのですが、トータルで聞くとおかしいんだよね。本人もどこかでわかってるから宇佐美を選ぶとこがすごい)
宇佐美の嫉妬が月島さんへ向かないのは本誌読時には、争いは同じレベルでしか発生しないからだよな、と思っていましたが
『月島軍曹殿は本当の鶴見中尉殿を理解できていないから』
の詳細として過去回想の鶴見と宇佐美の会話が追加されました。
『いいなあ、僕も月島軍曹殿みたいに鶴見中尉殿から「駒」として扱われたい』『あれって最高の使われ方じゃないですか』
『 私は部下を「駒」などと思っていない』
『 はいはい…でも僕が鶴見中尉殿に「戦友だ」なんて言われたら吹き出しちゃうかも』
菊田氏「うちの上等兵はどうなってんだ?」いやほんと、お察しします。というか、おかしな上等兵って言及されてるの宇佐美と尾形だけ。お察しします。
自分はあなたのこと理解してますからってアピールして嫉妬の対象を笑って落としておけば、表面的には負け戦しないで済みますね。
とか言ったらぶっ殺されそうだけど…。
メンコをする少尉と軍曹。月島さんはつきあいがいいな…人情家
その月島さんへの「戦友だ」シーンの拡大からの駒扱い。
宇佐美の尾形への絡みから流れ弾。
鶴見中尉は月島さんを惑わすのが人生の目的なの?
ってくらいなにもかも月島さんかよ、なんですが、もうむしろそれでいいんですが、これも後々の為の修整でしょうか? 今本誌えらいことになってますので。
破綻しつつ自分にとってだけ筋の通った論理を語る殺人者達の奔放な生きざまは、正しい論理を選ぼうとして苦しむアシㇼパさんよりずっと爽快で愉快だけど、むろん人としてそっちを目指してはいけない。
(息抜きの自家製あん肝。自分が作ったわけではありませんが…。あんこう鍋と日本酒のおともにどうぞ)
金塊を手に入れてどうするかの夢を語る人々の中で「いつもの娯楽」しか出てこない自分を考えるシライシの明るい虚無。
七面倒な理想やら誰かの為やら天下国家的を語る人に比べ、酒を飲んで遊郭に行ければいい以上の欲が浮かばない白石は、必要以上を求めない自然のようでもありますが、自分の生い立ちを思って「何か欠けてるのかな」と思うのかもしれません。
欠けているからといって殺人みたいなとこにいかない、白石の凡庸でまっとう(泥棒で脱獄王だけど)な好ましさ。
本気を見せない一方、信用されていないのかと密かに落ち込む。
大丈夫、それでいいです。私は白石が好き(誰への主張)
ボウタロウの野望って海賊王になる的な無邪気さがあるんですが、人に忘れられたくないから自分の国をつくって家族を増やして語り継いでもらうんだ、ってのが子供の無邪気の悲しさや暴力や残酷に通じる。
『季節のない街』で虐待されてされて耐えた子供が、好きな子を刺してしまって「死のうと思ったらあんたに忘れられるのが怖くて堪らなくなった」の悲しさに似てる。
「どうして?忘れたりしないよ」と言ってあげてほしいです。あと日本語読める人は全員『季節のない街』を読んでほしい。
ボウタロウとシライシの絡みは、互いに心をあかさないけれどそのことを互いに了解したうえでの絶妙な距離と理解で、まあかなり人間関係としてエロティックだと思います。
覆いかぶさって髪の毛を目の上に垂らすとかさ~~なんだよボータローは。
髪の毛のスタンド使いだよね。確実にね。
リパさんがスギモト好きなのはいいけど、男女の深い感情を全部恋愛絡みにするのはちょっとな。
自然は必要以上のものを取らない。とても同意。足るを知らない強欲はやっぱり人間の悪の一部で、どこかで自制すべきだと思う
勇作さんと尾形に関しては
11巻での感想は
「母が死ねば父は会いに来る=愛情の証明である=自分のしたことは正しかった」から連なる、「勇作が死んで自分が父親に愛されていたとわかれば自分が母を殺したのは正しかった」であり、「であれば、勇作もオレと同じである」ことがわかり、そこで初めて母を殺した自分が正しいと証明され、勇作さんも受け入れることが出来る、でした。
愛されたかどうかが自分を形成したのではなく、愛されていたなら自分はこう形成された存在であるはずだというのは、殺人者である自分をどう許容するかという話じゃないか、と思います。
殺人、と一般化していますが、ただ一つ、母殺しを指しているのだと思う。
尾形の母殺し問題は長くなるので別途。
今回の修正は、野田先生が尾形を最終的にどう描いて決着をつけるかが決まってきたことで、それは尾形にとって自分が殺人者である事とどう折り合いをつけるかなのでしょうか。
でも、勇作さんに振り回されて悪霊呼ばわりする罪悪感なんてクソがって尾形も好きだな。
ウエジについては次で。父権制と金カムについて。
感想をちゃんと書き留めておくの大事。
すぐ忘れちゃうから。さっき言ったことも忘れる。
忘れる上に考える力も衰えるから、時々フィードバックしないと。