2022/03/17
被害と加害
まるで時代が100年遡ったかのような帝国主義の亡霊によるウクライナ侵略戦争を見て、ゴールデンカムイが読めなくなってしまいました。
侵略戦争とはこういうものか、を目の当たりにして
あれ? 日露戦争ってなんで中国で戦ったんだっけ?
日清戦争も含め、侵略者同士の戦いでは?
戦争や歴史についてそれなりに考えていたつもりでしたが、全然考えていませんでした。
韓国、ロシアの辞典サイトを言語翻訳で見ましたが、わりと日本と書いていることは同じというか、事実=朝鮮中国利権をめぐる日本とロシアの戦いという感じ。
山川歴史資料集はやはり頼りになる。
細部については当事者の視点では偏りがあるため
ハイデルベルク大学Gotelind Müller氏のChinese Perspectives on the Russo-Japanese War という論文をななめ読みしてみました。
当時の中国では東北地方に関心が薄かった
清国の政府腐敗や無能であるという認識、アジア民族プロパガンダにより心情は反ロシアで日本寄りだった
当時は日本の私利私欲を分析する視点はなかった
皮肉なパラドックスとして戦争中は親日反ロシアであった中国革命家は、ロシアをロールモデルとするようになる
戦争は知識人だけではなく多くの中国人にアジアの将来を指し示すと思われた
1905年がなければ1915年の条約はなく1931年の最も苦い事件にはならなかったろう
中国に勢力を伸ばす、北部の熊(ロシア)、満州と韓国を指さす日の日本は足先で既に台湾を捉え、フィリピンからアメリカ鷲、インドシナからフランスのカエル、そしてマン中にいる英国の犬
http://archiv.ub.uni-heidelberg.de/volltextserver/15406/1/china%20and%20the%20russo-japanese%20war%20english.pdf
中国は中国内部の問題がまずありファンダメンタルが大変だったのですが
歴史を学ぶは、善悪ではなく事象の羅列とその分析だと思いますし、各国に思惑があり事情があるとはいえ
現代の自分の価値観で現在と過去を見れば、戦争は等しく「起こってはならない」もので、そこに対して事象の美化コーティングは長い目で見て実害です。正しい戦争なんてない。
エンターテインメントだしね、現実とは違う、政治的に不穏当なことは触れない、面倒なことは考えない、楽しめ、そう思っていたところがありますが、
いやそれで、本当にいいのか???
と思ってしまいました。
帝国陸海軍や日露戦争を作品のストーリーに入れつつ、現場である「中国」「朝鮮」に一言も触れない。なぜ何のための戦争だったのかを器用に迂回する。
アメリカ人やロシア人、アイヌおよびロシア近辺の少数民族は出てくるが、他のアジア人は出てこない。和製ウエスタンというコピーもなんだか、ああ、そういうものが好きなアメリカ世代…と思えてしまう。
無意識の隠蔽って、けっこう罪深いんじゃないだろうか。
これ何かに似ているな、と思ったら
「アメリカ人が描くベトナム戦争」
なんですよね。
俺たち兵士は傷ついた
俺は傷ついた
ってことばっかり。
いやいや、人の国に強欲と親切づらで乗り込んでその土地で人殺して、なんで被害者気分なんですか。「国にやらされた」これも批判ではなく被害者意識。じぶんのことばかり。ベトナムもベトナム人も目に入ってない。アメリカ、本当にすみずみ自己中心的。
思い返してみるとゴールデンカムイの主な人気登場人物ってこの発想なんですよね。
自分が傷ついた、傷つけられたことばかりで、傷つける側である、あった意識がとても低い
尾形をはじめ、杉元、月島、鶴見はこの要素がとても強い。
そしてそこに感情移入したり好意を持つ人がとても多い。
「私は被害者」ってオタクに親和性の高い感覚だと思うんですが、人は自分の加害性には無頓着で被害性に敏感なものなんだろうか。
プーチンも自分が加害者だとは思っていなくて、むしろ被害妄想が強そうな気がします。
自分の加害を認める事は難しい。
実感としてそれはわかる。
たとえ本当だとしても言われたくない。
本来なら、加害を認める事は恥でも傷でもないのに。
で、「自責」と「他責」って根本は同じなんですよね。
いわれていることの妥当性を思考する前に傷ついたり怒ったりする。
妥当性を検討するって、やはり自分自身の知力や思考の積み重ねが必要なので難しい。
だからそこをすっ飛ばして感情的になる。
そこを克服してこそ人間が学び成長するという事だろうと思うのですが。
気をつけよう!!!自戒 がんばろう!!
いつものことだけど!!